シティユーワ法律事務所
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  終期の記録のない将来債権譲渡登記の
対抗力に関する裁判(H14.10.10)について
 
   

平成14年10月10日、最高裁は、譲渡対象債権の発生年月日として始期のみを記録し終期の記録をしていない将来債権譲渡登記の対抗力について、始期当日以外に発生した債権には及ばないという判断を下しました。始期のみを記録し、終期の記録のない登記の対抗力が及ぶ範囲については、始期以降に発生した債権にも及ぶとした第1審(東京地判H13.3.9)と始期当日以外に発生した債権には及ばないとした原審(東京高判H13.11.13)で判断が分かれ、最高裁の判断が注目されていたところです。事案は、顧客に海外赴任に関するサービスを提供する事業を行っていた訴外A社が、そのサービスの対価として6社に報酬債権を有していたところ、その報酬債権を将来発生分も含めてY社及びX社に譲渡担保として譲渡し、Y社及びX社はいずれも、債権譲渡特例法に基づく登記を行い、対抗要件を具備しました。ところが、Y社の登記は、譲渡対象債権の発生日として始期のみが記録され、終期の記録がされておらず、他方、時的には劣後するX社の登記は始期及び終期の記録がなされていました。そのため、X社は、Y社の登記の対抗力は、始期として記録されていた日にのみ及ぶものであり、それ以降に発生した債権については及ばないので、自己の登記が優先すると主張しました。そのため、第三債務者6社が債権者不確知として供託を行ったため、Y社及びX社が、自己に供託金還付請求権のあることの確認を求めて争っていたものです。本件は、将来債権譲渡における譲渡対象債権の特定も問題となりましたが、本稿では、始期のみが記録され、終期の記録がなされていない将来債権譲渡登記の対抗力は、始期として記録された日に存在した債権にのみ及ぶのか、それとも、始期として記録された日以降に発生した債権にも及ぶのかという論点を取り上げたいと思います。ご存じのとおり、将来債権譲渡登記は、特に将来債権であると明記して行うものではありません。そして、債権譲渡登記の個別記録事項に関する平成10年法務省告示第295号によれば、債権発生年月日(始期)の記録は必須であるとされており、「債権の発生日が1つの年月日であるときはその年月日、債権の発生日が数日に及ぶときはその初日の年月日を記録するとされ、それは将来発生すべき債権についても同様である。」とされています。ところで、同告示によれば、債権発生年月日(終期)の記録は「任意」とされています。

この「任意」とは、終期の定めがある場合でも記録しなくてもよいという意味で「任意」なのでしょうか。それとも、終期の定めがある場合には記録の必要があるが終期の定めがない場合には記録の必要はないという意味で「任意」なのでしょうか。本件では、この解釈が争われました。 
第1審(東京地判H13.3.9)は、終期の記録が「任意」とされている以上、終期の記録がないからといって、債権発生日時点の債権のみ公示していると解することは困難であるとした上で、Y社は将来債権としての見積額を記録していると解され、Y社の債権譲渡登記は、債権発生の日から終期の定めのない期間発生した債権を譲渡の対象としていることを公示しているものであるから、Y社の登記の対抗力は始期として記録された日以降に発生した債権にも及ぶという旨を判示しました。
その控訴審である原審(東京高判H13.11.13)は、反対に、終期の記録が「任意」とされているのは、「債権譲渡契約において終期の定<BR>めが存在する場合には終期を記録し、終期の定めがない場合には終期の記録をしなくてもいい」という意味で「任意」とされているのであり、「終期の定めがあるのに、終期の記録をしなくても、将来債権譲渡登記の法的効果に変わりがない」という意味で「任意」とされているものではないとして、Y社の登記の対抗力は始期として記録された日以降に発生した債権には及ばないと判示しました。
第1審と原審とで判断が分かれたため、最高裁の判断が注目されていましたが、最高裁は、そして、「債権譲渡登記に係る債権の発生日年月日の始期は記録されているがその終期が記録されていない場合には、その債権譲渡登記に係る債権譲渡が数日にわたって発生した債権を目的とするものであったとしても、他に債権譲渡登記中に始期当日以外の日に発生した債権の譲受けを債務者以外の第三者に対抗することができないものと解するのが相当である。けだし、上記のような債権譲渡登記によっては、第三者は始期当日以外の日に発生した債権が譲渡されたことを認識することができず、その公示があるものとみることができないからである。」と判示し、終期の記録のない将来債権譲渡登記の対抗力は始期として記録された日以降に発生した債権には及ばないという判断を下しました。
始期のみを記録した将来債権譲渡登記の対抗力については、最高裁は以上のような判断を下したのですが、ここで問題が生じます。すなわち、実務上は、譲渡対象債権をその債権発生年月日では特定することのできない将来債権譲渡(例えば「被担保債権を完済するまで」など)が多数存在しますが、このような将来債権譲渡においては終期の記録をすることはできません。
最判H11.1.29及び最判H12.4.21にみられるように、将来債権譲渡における譲渡対象債権の特定性は緩和される傾向にありますが、仮に、本判決を将来債権譲渡の登記においては、始期及び終期を必ず記録しなければならないというように理解するのであれば、実体法上債権の特定性を緩やかに解しているのに、債権譲渡登記のレベルで「始期」及び「終期」の記録という限定を付してしまうこととならないでしょうか。
この点、原審では、「(将来債権譲渡の登記時に終期の記録ができない場合には)有益的記録事項として「各第三債務者に対して債権譲渡登記の通知をするまでの間に発生した将来債権のうち、同通知の時点で残存する債権」などと記録して、将来債権が譲渡対象に含まれておくことを明確に」するという終期の記録以外の債権特定の方法を提示しており、本判決でも、「債権の発生日が数日に及ぶときは始期の外に項番25の終期を記録するなどしてその旨を明らかにすることを要する」「本件債権譲渡登記には、譲渡に係る債権の発生年月日として、その始期は記録されているが終期は記録されていないというのであり、他に本件債権譲渡登記中に本件報酬債権のうち始期当日以外の日に発生した債権が譲渡の対象であるということをうかがわせる記録はない」と判示しており、終期の記録以外に将来債権であることを公示する方法の存在を想定していると言えます。その意味で、本判決は、将来債権譲渡の登記においては必ず始期及び終期の記録をしなければならないということを判示しているものではないと理解するべきでしょう。本判決により、終期の記録のない将来債権譲渡登記の対抗力という論点は決着したと言えます。したがって、今後は、将来債権譲渡登記にあたっては、始期と終期の定めがあるものについては始期及び終期の記録を行い、終期の記録ができないものについては、前記のような有益的記載事項を記録することによって、譲渡対象の債権を特定するとともに将来債権の譲渡であることを公示することが必要となります。むしろ、今後の問題は、将来債権譲渡であることを示す「有益的記載事項」の基準であり、さらには、有益的記載事項にとどまらず将来債権譲渡であることを端的に記録ができる方向での債権譲渡特例法の改正ということが課題となるのではないでしょうか。

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