法律用語集

当然対抗制度

読み方
:とうぜんたいこうせいど
分野
知的財産・IT

当然対抗制度とは、平成23年特許法改正(平成二三年六月八日法律第六三号)で導入された制度である。法改正により、通常実施権は、何らの要件を備えなくとも、権利の発生後の第三者に対抗できることとなった。法改正の施行日は、平成24年4月1日で、対象となる通常実施権は同日に存在しているものも含まれる。
特許のライセンス契約のライセンサーが当該特許権を第三者に譲渡した場合に、ライセンシーが当該第三者にライセンスの主張を対抗できるかというのが、ライセンスにおける対抗問題である。改正前の制度においても、ライセンシーは、専用実施権や通常実施権を登録しておけば登録後の第三者に対抗することが可能であった。しかし、現実の実務では、独占的ライセンスの場合に専用実施権を設定することは極めて少なく、登録をしない独占的実施権が設定され、また非独占的ライセンスの場合は登録をしない通常実施権が設定されてきた。その理由としてはライセンス契約をする企業が登録による情報開示をきらうことがあげられる。
ライセンスの対抗関係が特に問題になるのは、ライセンサーが倒産して、資産である特許権が第三者に移転される場合や、ライセンサーがM&Aにより、ライセンシーの予期しない企業に吸収合併されるなどの場合である。ライセンサーがライセンシーと競争関係にある企業に吸収合併され、ライセンスの承継を拒否されたり、ライセンス契約に対する破産管財人の解除権が行使されると、ライセンシーにとって事業の継続が危うくなるといった重大な問題が生じえた。このような問題を回避するために、当然対抗制度が導入された。
当然対抗制度のもとでは、特許を譲り受ける者が、当該特許にライセンスの存在することを調べておかなければならないことになる。Due Diligenceでこれを調べることになるが、特許譲渡人である特許権者がライセンシーから実施料を受け取っている事実があればライセンスの存在は容易にわかると思われる。無償のライセンスやクロスライセンスなどもあるので、特許を譲り受けようとする者が権利の帰属関係をよく把握する必要がある。
また、当然対抗制度について大きな論点となっているのが、通常実施権を「対抗」できる結果、特許権譲受人等に通常実施権の基礎となるライセンス契約自体が承継されるかどうかという問題である。この点については、承継説、非承継説、折衷説の争いがあり、折衷説が有力といわれるものの、いまだ議論が収束しておらず、今後の実務の動向が注目される。裁判例等が蓄積するまでの当面の間は、特許権譲渡契約、ライセンス契約の締結にあたっては、上記いずれの見解が採用されたとしても問題が生じないように条項を定める必要がある。なお、実用新案権、意匠権についても、同様の改正がなされているので注意が必要である。他方、商標権については従前どおり登録を対抗要件とする制度が維持されている。
著作権法についても、令和2年著作権法改正(令和二年法第四八号)により、ライセンスの当然対抗制度が導入された。法改正により、利用権(法改正により改正された著作権法61条3項において、「利用権(第1項の許諾に係る著作物を前項の規定により利用することができる権利をいう。次条において同じ。)」と定義された。)は、何らの要件を備なくとも、権利の発生後の第三者に対抗できることとなった。法改正の施行日は、令和2年10月1日で、対象となる利用権は施行日の前日において現存するものも含まれる。著作権法についても、著作権の譲受人等に利用権の基礎となるライセンス契約自体が承継されるかどうかという問題が生じる。この点については、特許法と同様、一定の基準が法定されたわけではなく、承継説、非承継説、折衷説の争いがあるため、著作権譲渡契約、ライセンス契約の締結にあたっては、上記いずれの見解が採用されたとしても問題が生じないように条項を定める必要がある。また、著作権法に特有の問題として、ライセンス契約を承継する旨の合意がされた場合にも、著作者が著作者人格権不行使義務を負い続けることを著作者との間で合意することを検討する必要がある。

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