
破産管財人による請求に対し、不法原因給付にあたることを理由として返還を拒むことは信義則により許されないとされた事例(最三小判平成26年10月28日)
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以下、判決引用部分の「上告人」、「被上告人」などの用語は適宜XないしYに置き換えています。
【判決の要旨】
無限連鎖講の防止に関する法律2条に規定する無限連鎖講に該当する事業を行っていた甲社の破産管財人Xが、甲社の上位会員であったYに対して配当金と出資額の差額を請求したところ、「Yが,Xに対し,本件配当金の給付が不法原因給付に当たることを理由としてその返還を拒むことは,信義則上許されないと解するのが相当である。」として、Xの請求を認めた。
【解説】
無限連鎖講に該当する事業において、上位会員(初期会員)は、通常、出資額より配当額のほうが多くなる。この場合、仮に事業者が当該会員に対して配当額と出資額の差額を請求した場合は、不法原因給付として請求は認められないものと考えられる。そこで、当該事業者が破産した場合、破産管財人の当該会員に対する請求が認められるかが論点となる。 この点、「破産者が破産開始決定前に当該債権を取得した時から不法原因給付により返還請求権が否定される場合には,破産管財人による不当利得返還請求は,民法708条により許されないと解するのが相当である。」などとして、第1審、控訴審とも、破産管財人の請求を否定した。
本判決は、信義則により、破産管財人の請求を認めたものであるが、「上記の事情の下においては」という限定を付している通り事例判断であり、その射程については、慎重に判断をしなければならない。この点、本判決が価値判断として「破産会社の破産管財人であるXが,Yに対して本件配当金の返還を求め,これにつき破産手続の中で損失を受けた上記会員らを含む破産債権者への配当を行うなど適正かつ公平な清算を図ろうとすることは,衡平にかなうというべきである。仮に,Yが破産管財人に対して本件配当金の返還を拒むことができるとするならば,被害者である他の会員の損失の下にYが不当な利益を保持し続けることを是認することになって,およそ相当であるとはいい難い。」とした点は射程を検討するうえで、重要な指針になるものと考えられる。
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