事業再生ADR
- 読み方
- じぎょうさいせいえーでぃーあーる
- 業務分野
事業再生ADRは、ADR手続の一種である。ADRとは、Alternative Dispute Resolution(裁判外紛争解決手続)の略称で、訴訟手続によらずに民事上の紛争の解決をしようとする当事者のため、公正な第三者が関与して、その解決を図る手続のことである。
「過剰債務に悩む企業」の問題を解決するため、2007年度の産業活力再生特別措置法(産活法)の改正により創設され、2013年度の産業競争力強化法(強化法)の制定により引き継がれた制度である。
事業再生ADR手続の利用目的は、事業価値の著しい毀損によって再建に支障が生じないよう会社更生法や民事再生法などの法的手続によらずに、債権者と債務者の合意に基づき、債務(主として金融債務)について、猶予・減免等をすることにより、経営困難な状況にある企業を再建することである。
2020年現在、特定認証紛争解決事業者(手続実施者)は一般社団法人事業再生実務家協会(JATP)のみであり、JATPによると、2020年3月までの利用件数は、アイフル株式会社、曙ブレーキ工業株式会社等の上場企業も含め、81件(253社)で、このうち55件(210社)で事業再生計画案に対し債権者全員が合意したとのことである。
事業再生ADRは、あくまで私的整理でありながら手続の透明性、公正性が担保されているが、利用するに当たっては手続申請時に資産評定等を済ませておくこと、事業計画や弁済計画の概要を定めておくこと等、事前準備が必要である。
事業再生ADRは私的手続であることから、①公表の必要がない、②商取引の円滑な継続が可能、③上場会社の上場維持が可能、などの点により、従来どおり取引を継続することで、調整対象とする債権者は任意で選択することが可能になる。また、法的手続ほどの法的拘束力はないものの、専門家の監督下で手続が進められるため、手続の安定性が確保されている。
法律上のメリットとして、①つなぎ融資に関する独立行政法人中小企業基盤整備機構の債務保証、②民事再生手続、会社更生手続に関する特例(DIPファイナンスの確保)、③特定調停における調停機関に関する特例(併用が可能)、④債務免除に伴う税制上の優遇措置、など他の法的整理との連携も図られている。さらに、①手続を利用する債務者について、企業規模や経営母体を問わない、②メイン以外の金融機関との調整を促進しやすい、③原則として3か月程度の短期間で成否が決まる、など事実上のメリットも大きいとされる。
- 経済産業省「事業再生ADR制度」(2021年10月12日閲覧)
- 一般社団法人事業再生実務家協会「事業再生ADRについて」(2021年10月12日閲覧)
(弁護士 森田豪丈 /2021年10月12日更新)
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