相続人不存在の場合における相続財産管理人(改正民法における相続財産清算人)
法律用語集

相続人不存在の場合における相続財産管理人(改正民法における相続財産清算人)

読み方
そうぞくにんふそんざいのばあいにおけるそうぞくざいさんかんりにん(かいせいみんぽうにおけるそうぞくざいさんせいさんにん)
業務分野

1 相続人不存在の場合における相続財産管理人(改正民法における相続財産清算人)とは

相続人不存在の場合における相続財産管理人とは、相続財産法人の財産管理人として、利害関係人又は検察官の請求により、相続開始地を管轄する家庭裁判所から選任された者をいい(民法952条1項、家事事件手続法203条1号・別表第1の99)、遺産の帰属主体である相続財産法人の法定代理人の地位にある。

なお、令和3年4月21日に成立した「民法等の一部を改正する法律」(令和3年法律第24号、令和5年4月1日施行予定。以下「改正民法」)では、相続人不存在の場合における相続財産の「管理人」は相続財産の「清算人」に名称が変更されている(改正民法952条1項)。

2 相続財産法人とは

人が死亡したときに、相続人が1人もいない場合や、相続人全員が相続放棄をする場合がある。そのような場合を想定して、民法は、相続人が不存在の相続財産の管理及び清算をするために、死者の財産上の権利義務を承継するものとして、相続財産法人を作り出すこととし(民法951条)、相続財産自体を法人とした(財団法人に類する)。

相続財産法人成立の要件は、①相続が開始したこと、②相続人のあることが明らかでないこと、③相続財産が存在することである。

相続財産法人は、被相続人死亡の時点で、法律上当然に成立する。法人となるための特別の手続(設立登記など)を要しない。家庭裁判所による相続財産管理人の選任は、相続財産法人成立の要件ではない。

相続財産法人は、被相続人の権利義務を承継した相続人と同様の地位にある。相続財産法人は、相続財産に関する訴訟につき、当事者適格を有する。

3 相続人の捜索と清算手続

家庭裁判所は、相続財産管理人選任後、遅滞なく、その旨を公告する(民法952条2項)。この公告は、相続人捜索公告としての意味のみを有する。

公告から2か月間に相続人が現れなければ、相続財産管理人は、2か月を下らない期間を定めて、債権の申出を促す公告を行い(民法957条1項)、この期間が満了すると、清算が開始される(同条2項)。なお、改正民法においては、相続人捜索公告後の2か月間の待期期間が廃止され、最初の相続人捜索の公告があったときは、相続財産の清算人は、債権の申出を促す公告をすることとされている(改正民法957条1項)。

相続財産管理人は、相続財産から、各相続債権者に、その債権額の割合に応じて弁済しなければならないが、優先権を有する債権者の権利を害することはできない(民法957条2項・929条)。

債権の申出の期間が満了しても、なお相続人のあることが明らかではないときは、家庭裁判所は、相続財産管理人又は検察官の請求により、6か月間を下らない期間を定めて、相続人があるならばその権利を主張すべき旨を公告しなければならない(民法958条)。この期間内に相続人としての権利を主張する者がなかったときは、相続人、相続財産管理人に知れなかった相続債権者、受遺者は、もはやその権利を行使することができなくなる(民法958条の2)。なお、改正民法においては、債権申出期間満了後の最後の相続人捜索の公告は廃止され、最初の相続人捜索の公告が定めた期間(6か月を下ることができない。改正民法952条2項後段)の経過により失権する。

4 残余財産の帰属

上記3の清算手続を経た上で、さらに財産が残った場合、まず、特別縁故者(被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者等)に対する相続財産の分与を行う(民法958条の3第1項)。特別縁故者は、最後の相続人捜索の公告期間の満了後3か月以内に、財産の分与を請求しなければならない(同条2項)。なお、改正民法においては、最初の相続人捜索の公告期間の満了後3か月以内とされている(改正民法958条の2第2項)。

特別縁故者がいない場合、あるいは、特別縁故者に相続財産を分与してなお財産が残るという場合には、その財産は、国庫に帰属することになる(民法959条)。

(弁護士 森田豪丈 /2022年6月1日更新)

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