中国の倒産制度
法律用語集

中国の倒産制度

読み方
ちゅうごくのとうさんせいど
業務分野

現行の中国の「企業破産法」は、国有企業のみを念頭に置いていた旧法(「企業破産法(試行)」(1988年11月1日施行))に代わり、2007年6月1日に施行された。中国語の「破産」のニュアンスは日本の「倒産」に近く、「企業破産法」において、企業に係る清算型の倒産手続のみならず、再建型の倒産手続が併せて規定されている。このうち、日本の破産に相当する手続は「破産清算」と呼ばれ、再建型倒産手続は「重整」、和議手続は「和解」とそれぞれ呼称される。このように日本語の漢字と中国語の漢字とで意味が似て非なるため、誤解が生じないよう注意する必要がある。

中国における企業の倒産制度は、基本的には、申立て要件、申立て受理決定の効果、管財人(中国語では「管理人」)の権限、再建型手続の進行、担保付き債権の処遇、一般債権者の取扱い、株主の取扱い、M&Aの利用などにおいて、日本における倒産制度と共通する仕組みの下に立法されていると評価することができる。他方で、日本の制度との比較の観点からの特色として、清算型と再建型が同一法典において規律されていることのほか、全ての倒産手続に管財人(管理人)制度が適用されること(例外的にDIP型が設けられており、債務者の申立てにより人民法院が認可することを条件に、管財人(管理人)の監督の下で自ら管理することも可能となる。もっとも、実務上、必ずしも採用される例は多くはない。)、否認事由が日本と異なり当事者の主観を考慮しないこと、無償行為否認の期間が受理前1年間であるなど債権者にやや厳しいことなどが挙げられる。

なお、2004年6月に全国人民代表大会に提出された「破産法(草案)」で個人破産制度の導入が見送られるなど、従前、中国において個人に係る破産制度はなかったが、2021年3月1日から深セン市において、初めて個人に係る破産制度が導入された(「深セン経済特区個人破産条例」)。

(弁護士 藤田直佑 /2021年10月28日更新)

この業務分野を取り扱う弁護士

関連するニュース

関連する論文・著書・ニューズレター・セミナー/講演等