中国の個人情報越境移転の標準契約
法律用語集

中国の個人情報越境移転の標準契約

読み方
ちゅうごくのこじんじょうほうえっきょういてんのひょうじゅんけいやく
業務分野

個人情報を中国国内から中国国外に移転(越境移転)する場合、(1)国のネット情報部門による安全評価を通過すること、(2)専門機関による個人情報保護認証を取得すること、(3)移転当事者間で「標準契約」することのうちいずれかを実施して行う必要がある。

これらのうち、(3)「標準契約」を締結する場合(実務上選択されることが多いものと思われる)、契約発効日(特段の約定をしない限り締結日に発効するものと考えられる)から10営業日以内に所在地の省レベルのインターネット情報弁公室に対して「届出」(備案)手続を行う必要がある。
「届出」を行うに際しては、(a)統一的社会信用コード証書の写し、(b)法定代表者の身分証明書の写し、(c)担当者の身分証明書の写し、(d)担当者授権委託書、(e)誓約書、(f)標準契約、(g)「個人情報保護影響評価報告」を提出する必要がある。(d)~(g)についてはテンプレートが公表されており、それを利用して作成することとなる。

「届出」手続ではあるものの、申請を受けたインターネット情報弁公室は、15営業日以内に申請者に対して「通過」、「不通過」の結果を通知するものとされており、提出資料に対して一定の審査が行われることが想定されている。

「届出」を行った後においても、個人情報の越境移転の目的、範囲、方法、保存場所等に変更がある場合や、保存期間を延長する場合、国外受領者の所在国・地域の個人情報保護政策・法規の変化等により個人情報にかかわる権利に影響が及ぶ虞がある等の場合には、改めて標準契約の締結、個人情報保護影響評価を行い、届出をし直す必要がある。

なお、2023年9月28日に「国家インターネット情報弁公室」が公表した「データの越境流動の規範化及び促進規定」の意見募集稿(パブコメ草案)によれば、就業規則や労働協約に基づき人事管理を実施するにあたり従業員の個人情報を国外に提供する必要がある場合や、1年間の個人情報の国外提供が1万人に満たないと予想される事業者の場合は上記(1)~(3)の手続きを省略できること等が定められており、当該規定が正式に施行されれば多くの日系企業でこれらの手続きを省略できる可能性があることから制定動向が注目されている。

(弁護士 住田尚之 /2023年10月31日更新)

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