損害額の認定
法律用語集

損害額の認定

読み方
そんがいがくのにんてい
業務分野

本来、損害賠償請求の事案では、原告は、不法行為や債務不履行の要件として、「損害」が発生していることだけでなく、その「損害額」まで立証することが必要である。しかし、例えば火事で自宅が全焼して内部の動産が全て消失した場合など、損害が発生しているにも関わらず損害額を立証することが困難な場合に請求を棄却することは公平に反し、被害者の救済に欠ける。
そこで、平成10年1月1日に施行された民事訴訟法において、(1)損害が生じたことが認められる場合において、(2)損害の性質上その額を立証することが極めて困難であるときは、(3)口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づくことを要件として、裁判所は相当な損害額を認定することができることが規定された(民事訴訟法第248条)。
もっとも、文言上は「相当な損害額を認定することができる」と規定されて裁判所の裁量であるように思えるが、平成18年1月24日及び平成20年6月10日の最高裁判決は、裁判所の義務であると判示したと解されている。
原告の主張立証が不十分な場合にも裁判所が義務的に相当な損害額を認定することになると、当事者の提出した資料に基づいて事実認定し、相互に主張反論することを通じて相対的な真実が明らかになるという弁論主義の構造を揺るがすことにもなりかねない。
上記(1)ないし(3)の要件や、「相当な損害額」をどのように認定すべきかなど、今後はより詳細な解釈が待たれる。

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