シェンゲン協定(Schengen Agreement)
法律用語集

シェンゲン協定(Schengen Agreement)

読み方
しぇんげんきょうてい
業務分野

欧州のように国境の密集した地域での投資先の国の選定に際しての法制面でのチェック項目には、会社法・労働法・税法等のみならず、ターゲットとする主要市場との人や物の流れの自由度も重要だ。人件費が安い国に投資しても、ターゲットとする市場との国境での通関に何時間もかかったり、ちょっとした出張の度にイミグレの行列に並ばされたりでは仕事にならないからだ。本項では欧州法の基本条約の「人の自由移動」原則をさらに深化させたものがシェンゲン協定Schengen Agreementだ。

単一市場を確保する重要な要素である人の自由移動はEU(ならびにEEA)加盟国の国籍を有する者に域内自由移動を認めるものである以上、加盟国は入国希望者の国籍を確認することは許されなければならない。しかし全入国希望者の国籍をチェックすると、結果において人の自由な移動は実現しない。EUの単一市場の理想から見れば、東京都と神奈川県の境で日本国籍の有無を確認するためにすべての通行者の住民票を確認するのに等しい結果になってしまうからだ。そこで1985年に独仏+ベネルクス3国の5カ国間で国境検査そのものを廃止したのがシェンゲン協定だ。爾後加盟国は増え続け、現在は25カ国にも達した。これら国々の間の空路は国内線ターミナルに発着し、道路を走っていても国境にあるのは「これより○国」という標識1枚だ。シェンゲン協定は1997年のアムステルダム条約で欧州連合法に受容されたものの、EU加盟国とは必ずしも一致しない。EU非加盟・シェンゲン加盟のスイスのような国もあれば、EUと一定の距離を置く英国のようにその逆もある。

パリ北駅やブラッセル南駅(写真下)のように英国直通列車も発着する駅では、シェンゲンルールの適用の有無が目に見える形で表れる。金網の向こうではケルン(独)やアムステルダム(蘭)方面の列車が発車時間を待つ傍らにパリ(仏)からの列車が到着するが、これらシェンゲン協定加盟国相互を結ぶ大陸の国際列車は国内線扱いでホームも相互に全く出入り自由だ。これに対して「非シェンゲン」のロンドン(英)と大陸を結ぶ列車が発着するホームだけは他のホームと金網で厳重に隔離され、乗客はパスポート検査の長蛇の列を経なければ英国線ホームに入れず、時間的余裕を十分持って来ないと乗り遅れてしまう。

シェンゲン協定
隔離された英国線ホームから金網越にシェンゲン側のホームを撮影

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